二人旅
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朝、ひかりに乗り新大阪に向かう。車中、息子との会話は想像していたより少ない。ぽつりぽつりといった具合。
御堂筋線に乗り換え、なんばの「スイスホテル南海大阪」にチェックイン。立派なツインルーム。男二人旅にはもう少し地味な方が良い気がしたが、JTBのパックで選んで初めて泊まるホテルなので文句は言えない。
17階の窓から見下ろすと新歌舞伎座が見えた。荷物を置いてフロントに行き、神戸の地図をもらい明日行く予定の「浄瑠璃寺」へのバスの時間などを聞いてみた。奈良交通のホームページなどで調べていただいき、近鉄奈良からよりも加茂からの方が便が多そうだと分かった。調べるのにまだ少し時間が掛りそうだったので、奈良交通の電話番号を聞いて自分で確かめてみることにした。このあたりのフロントでのやりとりを息子は見ている(そう、旅には現地でのこういう調査も重要なのだよ)。
地下街のマックに入り、クォーターパウンダーのセットを二つ注文すると、WBCの選手の写真の印刷された赤いファイルを4枚くれた。ホテルに戻る気はしなかったので、ファイルは息子が持って歩くことにした。3月20日に開通したばかりとフロントの方が教えてくれた「阪神なんば線」に乗って三宮に到着。
三宮センター街を通り、中華街を歩き、北野通りを上って「港みはらし台」まで行ってみた。今日は明日のための足慣らしである。途中、長男と5年前に来た際に食事をした「ニシムラ」があったので、次男にその事を話す。
みはらし台の近くの住宅の横を通った際、大型のシェパードがやってきて甘えた声を出した。私が、顔を撫でたりしたが、シェパード君の関心は次男にあるようだったので、触ってみるように言ったが、「いや、いい。」と言って触れなかった。彼は動物を飼ったことが無いので大型の犬が怖いのだ。もうちょっと好奇心を持ってほしいなと思ったが、そこはそのまま立ち去る事にした。
帰りは、阪急に乗った。20年ほど前に数か月、大阪に住んだ際に使っていた路線だ。阪急塚口で途中下車する。住んでいたアパートに行ってみようかと思い、歩き出す。途中までは自然と足が向かったが、結局、アパートを見つけることは出来なかった。
なんばまで戻り、南海通というアーケードにある「ゆかり」というお好み焼き屋で食事を摂り、ホテルに戻った。
27日/晴れ時々曇り一時雨。
朝、大和路快速で加茂に向かった。駅前より10時16分の小型バスに乗り込み、運転手の巧みな運転で、時々一車線になる二車線の曲がりくねる山道を走り、浄瑠璃寺前で下車。
九体の阿弥陀如来の並ぶお堂の内部は簡素な断面形状を持つ簡潔な作りである。ここに来るのは二十年ぶりだが、以前見たときよりも味わい深く感じられた。息子はほとんど関心がない様子。
さて、今日はここが出発である。旅行に出る前の晩に、Googleの地図を画像にして切り貼りし、浄瑠璃寺-加茂駅-海住山寺の辺りを、十数枚のA4のコピーにして持って来ているのだが、これを頼りに、浄瑠璃寺から歩き始めた。
まずは下りである。国道44号線を歩いたり、遠回りでも細い道がある場合はできるだけそちらを回ったりしながら、民家の間や、小川の横や、田んぼの中の道を歩いた。それにしても、Googleの地図は正確である。辿った細い道は、印刷の通りであった。
歩きながら息子に話しをした。彼について感じていること、この時期に伝えたいと思っていた自分の考えなど、いろいろ。1時間半ほど。
加茂駅前のパン屋でランチを食べ一休みしてから再び歩き始める。今度は上りである。
寂れた商店街を抜けて木津川を渡るあたりで、ぽつぽつと雨が降り出した。小ぶりなのでそのまま橋を渡り始めたが、渡り終わる頃は大分コートが濡れてきた。この季節としては寒いので皮のコートを着て、中折帽を被ってきたのだが、この格好は雨にも強い。息子も水を弾くフード付きのジャンパーだったので良かった。
雨が強くなってきたので、雨宿りをした。小ぶりになったので歩き出すとまた強くなったりした。道すがら3か所で雨宿り。地図も雨で濡れて印刷が滲んでくる。
先ほどまで、地図の正確さに人知の有能を感じていたのだが、今は自然の気まぐれに人生の忍耐を感じたりしていた。ずーっと歩いている細い道を人生に例えると、予め技術を駆使して立てた計画が有効な順調な時期もあれば、俄かの雨で立ち止まらざるを得ない時もある。いつまで雨宿りしていれば歩き出せるのか、雨宿りしている間は分からない。
だがやがて雨が上がったので、歩き始める。ここで僅かだが道を間違えたことに気づいた。最初の予定通りに歩いていたら雨宿りする軒が無かったようだ。
海住山寺に向かう道は少しずつ勾配が急になり、山に入って行く。汗をかきながら1時間ほど歩いて到着。3か月ぶりでここの五重塔を眺め(年末の赤垣会でここに来たときから今回の計画を練り始めていたのだ)、お堂の縁側に腰かけて一休みしてから、山を下りようと歩き始めた。
途中、すれ違ったおばあさんと挨拶。ふと、加茂のこの辺りに老後住むのも楽しそうだと思った。
このまま駅に向かって歩こうと考えていたが、3か月前と先ほど、横を通った小学校の事が気になりはじめた。瀟洒な外観が印象的な木造の校舎の「内部」を見られないものか。だが、学校に向かいながらも気持は逡巡していた。
門扉が閉じられていたのでやはり止めようかと思ったが、取っ手を回すと開いた。中に入り、声を掛けると先生が出て来られた。理由を話すと、相談してくるからしばし待つようにとの事。門扉の外の車の陰に隠れるように佇む二男を呼んだ。彼は最初頑なに嫌だと言ったが、見られるか見られないか分からないが、また興味が無くとも、ともかくもどうしてもここに来いと言うと渋々入ってきた。
間もなく、先生が戻って来られ、内部を拝見させてくださるとの事!
まずは、校庭に出て外観。次に、1階・2階の内部、講堂などを一緒に回って説明して下さった。なんと教頭先生であった。ここは恭仁小学校(くにしょうがっこう)という学校で、昭和11年に作られた校舎との事。息子も一緒に回って話を聞いていた。思い付きだったが、良い経験となった。
道々息子に、「尋ねてみなかったら、後になってひょっとして見られたのでは無いかとうじうじする。断られて嫌な思いをしてもそれはそれで納得できる。勿論、見ることができたらそれは良い経験になる。ともかくも、興味の湧いたことは試してみるのが良いのだ」と説明すると、彼もそれなりに納得している様子だった。
天王寺に戻ると夕方の5時少し前。吉村徹氏に電話してみる。心斎橋で待ち合わせ、鴨肉の蕎麦しゃぶに連れて行って下さった。7時ころ氏と別れ、ホテルに戻った。
28日/晴れときどき曇り。
ホテルで朝食を摂り、NHKの「だんだん」の最終回を見てからチェックアウト。なんばの街をすこしうろうろしながら何処に行こうかと迷っていたが、やはり京都方面にも行ってみようかと思い、淀屋橋から京阪に乗って東福寺に向かった。
久しぶりに枯山水などを見たのち、JRにて京都に出て駅ビルでお茶を飲んで一休みし、新大阪より帰路についた。
帰宅するとめずらしく長男も玄関に出迎えてくれた。私はひとり、荷物を置いて楽譜を持ち合唱の練習に向かった。少し遅刻したが、思いきり歌い酒を飲んで、深夜に帰宅した。
29日/晴れ。
朝、事務所でメールチェック。沢山のメールにはいろいろな種類があり、中には気持の沈む内容のものもあった。返信を終えると時間となったので、目白に出かけた。
今日は、「アミチ」と言う今は無いがとても素敵な合唱団で友人になったOさんが長岡から出張で来ているので、同じく団員だったYさん、Mさん、Oさんと5人でランチ。メッツホテルのフィオレンティーナで12時から3時間もいろいろと話しをした(やはり女性たちは沢山喋る)。
皆と別れたのち、かみさんにメールし、早稲田駅で待ち合わせて、リーガロイヤルホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら、旅行でのエピソードを話した。
三分咲きのソメイヨシノの様子を見ながら神田川に沿って高田馬場まで歩き、地下鉄に乗り帰宅。晩飯を久しぶりに家族四人で食べた。
今日の事務所 ~荒木毅建築事務所の 日々の覚書 ~